宇宙シロクマ

Tuscan Blue's blog

ミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』感想 前編


鈴木拡樹さん主演ミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』感想ブログ

Musical "LITTLE SHOP OF HORRORS"

略称:LSOH、リトショ

公式サイト:シアタークリエ ミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』 

 

はじめに

 

「役者は毎公演が千穐楽と思って演じる」という言葉があります。

 

『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』を観劇した時の私も、まさにそんな気持ちでした。

 

もしかすると今日が最後になるかもしれない……

 

明日は上演されないかもしれない……

 

「これが千穐楽だと思って観よう」

 

そう覚悟してシアタークリエに臨んだのです。

 

マスクをして、手の消毒をして、万全の準備を整えて。

 

初めて本格ミュージカルに挑戦した鈴木拡樹さんを応援するために。

 

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2020年3月21日、シアタークリエにて

  

観劇後は、幸せな気持ちになりました。

 

拡樹さんが生き生きと楽しそうに演じていて、これまでの演劇人生を全投入したような最高の芝居を見せてくれたからです。

 

すべてがシーモアの中に生きている……

 

そう思いました。

 

作品としてもすばらしく、奇跡のような舞台でした。

 

拡樹さんの出演作でこんなにも満足したのは、『髑髏城の七人 Season月 下弦の月』以来のことです。

 

 

本稿の目的は主に三つあります。

 

(1) 鈴木拡樹さんのシーモアがいかに特別で新しく、最高だったのかを宇宙のどこかに残しておきたい。

 

(2) 東宝版『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』初演がいかにすばらしかったのかを伝えたい。

 

(3) 東京は即完売するほどの人気公演だったにも関わらず、残念ながら中止となってしまったために観劇できた人が少ない貴重な本作を、いつか再演していただきたい。

 

 

世界が元気を失っている今、私も毎日つらく、悲しい気持ちで過ごしています。

 

暗闇の中で、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』を観た二日間だけがまぶしく光り輝いているようです。

 

公演中に書き始めた感想もなかなか進められなかったのですが、この三つの思いに突き動かされてなんとか書き上げることができました。

 

本作を上演してくださった東宝とすべてのスタッフ、キャスト、すばらしいカンパニーに限りない感謝をこめて……

 

目次

 

観劇日 (鈴木拡樹さん、妃海風さん回)

2020年3月21日(土)マチネ 東京2日目

2020年3月27日(金)マチネ 東京千穐楽

 

※自粛要請が出る前の公演です

※ここから先は、内容にふれています

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 『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』とは

 

『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ(LSOH)』は40年近い歴史をもつ世界的なミュージカル作品ですが、日本では知る人ぞ知る……という通好みの人気作だったのではないかと思います。

 

私は2000年代の後半にイギリスとアメリカでミュージカル版を(学校の公演も含めて)何度か観劇したことがありますが、日本で観るのは初めてでした。

 

その後、映画もブルーレイで観ています。

 

しかし、どちらも特にお気に入りのタイトルというわけではありませんでした。

 

これほどまでに感動したのは今回の東宝版が初めてのことです。

 

実力のあるスタッフ・キャストによって新たな名作として生まれ変わった本作に、改めて出逢うことができてうれしく思っています。

 

 

『LSOH』のオリジナルは、1960年のブラックコメディ映画です。

 

1982年に、まだ有名になる前のハワード・アッシュマンとアラン・メンケンによってミュージカル化されました。のちにディズニー映画やブロードウエイで大活躍することになる二人の出世作です。

 

初演はオフ・オフ・ブロードウエイ、座席数100以下の小さなWPA劇場です。

 

その後、オフ・ブロードウエイのオルフェウム劇場で大ヒットし、翌年はウエストエンドのコメディ劇場で、1984年には東京の博品館でも上演。

 

1986年にミュージカル映画化されました。

 

ブロードウエイでも成功をおさめ、各国で何度も再演されていますが、本来は小さな箱でこじんまりと上演されるカルト・ミュージカルだったのです。

 

ストーリーは、実は、歌詞の意味を探れば探るほど深いものを秘めています。

 

今の社会情勢の暗喩なのではないかと思わせられるような、ほの暗いところもあります。

 

その一方で、笑いどころもたくさんあるので、ポップなブラックコメディとしても楽しめるのです。

 

キュートでカラフルな包み紙につつまれた毒入りキャンディのような作品です。

 

甘くておいしいキャンディをペロペロなめているうちに、隠された毒に少しずつふれてしまう……そんな中毒性があるからこそ、長年愛されてきたのかもしれません。

 

楽曲もキャッチーでメロディアス。

 

1960年代初期のロックンロールやドゥーワップ (doo-wop)、モータウンサウンドなどのスタイルで作曲されています。

 

オペラのアリアのように立ち止まって朗々と歌い上げる楽曲はありません。

 

キャストも少人数なので、ミュージカル文化の豊かなアメリカでは高校や大学、アマチュア劇団によって上演されることもよくあります。

 

それゆえチープにしようと思えばできる作品なのですが、今回の舞台は違いました。

 

東宝がプロデュースし、適役で実力のある演者をそろえた結果、豪華で見ごたえのあるミュージカルに生まれ変わっていたのです。

 

演出も、音楽も、美術も、振付も、照明も、音響も、衣装も、ヘアメイクも、役者も、バンドも、写真も、映像も……すべてが素晴らしく、まさに総合芸術でした。

 

舞台に魔法があったのです。

 

 

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延期と中止の狭間で

 

私が最初に観劇したのは、3月21日(金・祝)のマチネです。

 

本来ならば、初日の3月13日(金)に観劇するはずだったのですが、新型コロナウイルスの影響を受けて中止になってしまったのです。

 

シーモアからのメッセージ(公式Instagram

 

初日は16日(月)に延期され、さらに20日(金)に延期されて、ついに開幕したのでした。

 

スタッフのみなさまが尽力してくださったおかげだと思っています。

 

(観劇する予定だった4公演(初日13日、14日、18日、千穐楽31日)は残念なことにすべて中止となってしまいましたが、心やさしい方々のおかげで21日と27日に観劇することができました。)

 

いつ幕が上がるのかもわからない不安な状況下で、常に万全のコンディションを保つ必要があったキャストのみなさんは、心身ともに大変な苦労があったのではないでしょうか。

 

歌は繊細なものですから、拡樹さんもいつも以上に大変なのではないかと、毎日心配しながら状況の推移を見守っていました。

 

3月20日にムシュニクフラワーショップが新装開店したときは、「ついに……!」という気持ちでとてもうれしかったです。

 

 

初日の拡樹さんのツイート

https://twitter.com/hiroki_0604/status/1240879744419123200

 

TohoChannel公式YouTube

 

鈴木拡樹さんの初めてのミュージカル

 

『LSOH』の情報解禁があったのは、去年の4月15日のことです。

 

「歌が苦手」だと公言していた拡樹さんが、なぜ、よりによってミュージカルに……!?と、驚きました。

 

私は拡樹さんの演技力を信頼しているので、もしストレートプレイであれば、どこの舞台に立つとしても安心して見ていられます。

 

もし東宝のストプレに主演すると発表されたなら、期待でいっぱいで、ただただ楽しみだったことでしょう。

 

でも、ミュージカルとなると話は別です。

 

主役のシーモアは12曲も歌います。

 

東宝の舞台に立ってほしいと思っておりましたので、とてもうれしいお知らせではありましたが、同時に、「大丈夫かしら……?」という不安と心配で胸がいっぱいになりました。 

 

鈴木拡樹さんの歌声

  

ストレートプレイの場合は、演技が「上手」とか「下手」とかいうことは、実はそれほど重要ではありません。

 

もちろん上手なほうがプロとしては好ましいですけれども、たとえどのような演技力であったとしても、板の上に立つとそれが個性になり得るからです。

 

たとえ棒読みしかできない人であっても、演出次第では個性を発揮するのが芝居のいいところです。

 

演劇は宇宙のように包容力があるので、あらゆる人間を生かすことができます。

 

芝居には「正解」がない。

 

もしくは、あらゆるものが、努力次第で正解となりえるのです。

 

 

しかしご存じのように、音楽は、また別です。

 

特に歌声は、天からのギフトです。

 

努力ではどうにもならないのが、音楽の才能なのです。

 

さらに、音楽には音符という「正解」があります。

  

プロの歌い手でしたら正解を踏まえた上での個性が重視されますが、言うまでもなく、まずは楽譜通りに歌うことが肝要です。

 

 

鈴木拡樹さんをご存じない方のために少し説明すると、彼は元々、とても良い声をしています。

 

ストレートプレイでの声は絶品です。

 

いろんな声色で演じることもできます。(役の演じ分けとは声色を変えることではありませんが、技術のひとつです。)

 

歌う時の声も、(当たる音域であれば)なかなか良いと思います。

 

(舞台やテレビで歌うこともありますし、レコーディング経験もあります。)

 

良く言えば、リリック。声に甘く響く要素があって、素敵です。

 

ただ、セリフの時ほど良くはありません。

 

端的に言えば、拡樹さんがミュージカルに主演するとなれば、困難な道を行くことになるのは明らかでした。

 

それにもかかわらず、拡樹さんはオファーを受けたのです。

 

あえて、苦手な分野にチャレンジすることにしたのでしょう。

 

 

去年の11月27日におこなわれた『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』合同取材会で、拡樹さんは下記のように語っています。

 

引用: 

鈴木「初めて挑戦することへの不安はもちろんありましたが、事務所の人間や企画制作して頂いている皆さんから「全力でサポートするよ」ってことも事前に言って頂けたので、その中で戦えるのであれば僕も精一杯やらせて頂こうと。「やるぞ!」って気持ちで受けさせて頂きました。

【引用元:ローチケ演劇宣言 https://engekisengen.com/genre/musical/19550/

 

 

これを読んで、おそらく、これまでにない良い環境でお仕事ができることになったのではないかと思いました。

 

もしそうなのだとしたら、とても喜ばしいことです。

 

いつもお仕事が重なって多忙だった拡樹さんが、ある程度の準備期間と指導を与えられたらどうなるのか、どこまで役を仕上げることができるのか……見せてほしいと思いました。

 

実力のあるミュージカル俳優の先輩方と共演できるのも、素敵なことだと思いました。

 

TohoChannel公式YouTube 

 

昨年の初秋あたりに、歌稽古をしているというコメントを聞きました。

 

カンパニーでの全体稽古が始まる前に、個人的にレッスンに通っていたのでしょう。

 

一生懸命、努力しているのだろうと思いました。

 

まじめな拡樹さんのことだから、毎日がんばっていたことでしょう。

 

努力に努力を重ねて、調べに調べて、全身全霊をかたむけて準備をしていたのではないかと思います。

 

 

10月以降の舞台出演が発表されなかった時点で、これは本気なのだと確信しました。初ミュージカルにむけて本気で特訓しているのだと。

 

毎月のように舞台に立っていた拡樹さんが、半年もの間、ほかの舞台を入れなかった。

 

それほど特別なお仕事だということです。

 

映画やテレビなどのお仕事の都合もあったとは思いますが、まずはリトショを最優先にして他のスケジュールを組んだのではないでしょうか。

 

拡樹さんにとって初めての本格的なミュージカル、しかも主演、さらに全国ツアーもある大きなプロジェクト。東宝演劇部からのオファーも初めてのことです。

 

並々ならぬ決意と覚悟があったはずです。

 

 

11月13日に、「歌うことを楽しめるようになってきた」という拡樹さんのツイートがありました。

 

https://twitter.com/hiroki_0604/status/1194593183176355840

https://twitter.com/hiroki_0604/status/1194595275597238274

 

「楽しい」という気持ちは一番大切なことだと思うので、とてもうれしかったです。 

 

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さまざまな思いをのせて月日は流れ、ついに観劇することができた3月21日、公演2日目────

 

3度目のカーテンコールで立ち上がった私は大きな拍手を送りながら、拡樹さんは「報われた」のだと思いました。(後述しますが、これはリトショのキーワードです)

 

拡樹さんにしかできない、特別なシーモアが誕生したのだと。

 

長い時間をかけて、舞台はこれ一本にしぼって、心血をそそいできたお仕事が見事に花開いた瞬間でした。

 

 

歌に関しても、去年の6月に観劇した『最遊記歌劇伝-Darkness-』の時とくらべると遥かに上達していました。

 

以前よりも、歌で感情が表現できるようになっていたのです。 

 

とてもいいと思ったのは、声のあたたかさです。

 

歌声に包み込むようなあたたかさが生まれていて、聞いていて心地よい瞬間が何度もありました。

 

"作った声"ではなく、拡樹さん本来のあたたかい声で歌えるようになったからだと思います。

 

 

さらに感動したのは、千穐楽でした。

 

21日よりも千穐楽のほうが、音程も発声も良くなっていたのです。

 

少なくとも、21日とは目指すところへの“意識”が違うことが、客席まではっきりと伝わってきました。

 

胸が熱くなった瞬間でした。

 

(全曲レビューで書きますが、特に懸念していた曲のソロで。)

 

もし公演が最後まで続いていたとすれば、さらに成長したのではないかと思います。

 

 

歌は、一朝一夕には良くなりません。

 

大人が改善するのは非常に難しい。

 

その厳然たる事実を鑑みると、拡樹さんの努力と進歩はすばらしいことだと思います。

 

もしかすると、わずかな一歩にしか見えない人もいるかもしれません。

 

でも、私には、まぶしく輝く大きな飛躍に見えました。

 

 

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奇跡の公演

  

開幕後は、千穐楽まで無事にたどり着けるように心から願っていたのですが、3月25日(水)に東京都から「土日の外出自粛要請」が出されました。

 

その日は、拡樹さんの5公演目が終わったばかりでした。

 

翌26日(木)は休演日。

 

東宝の発表を待っている間は、もしかすると25日で終わってしまう可能性もあるのではないかと、不安でしかたがありませんでした。

 

できることなら、あと数日、千穐楽まで完走させてあげたい……!

 

それが叶わぬ望みなのだとしたら、せめてあと一回、千穐楽の日をつくってあげてほしかった。

 

「昨日の公演が千穐楽になりました」と後から知るのは、キャストにとってとてもつらいことだと思うからです。

 

翌26日に、東宝演劇部より「3月28日(土)以降の公演中止」が発表されたときは心が引きちぎられるような気分になりました。

(公式発表:https://www.tohostage.com/cancel2020_5.html

 

それでも、27日(金)に千穐楽をもうけてくださったことに心から感謝しています。

 

カンパニーのみなさんにとっても、突然「もう公演はできない」と告げられるよりは、最後に1公演、千穐楽という心構えをして舞台に臨めたことはせめてもの救いだったのではないかと思います。

 

観客としてもそれは同じです。

 

千穐楽だとわかって観劇して、大きなスタンディングオベーションをおくることができたのは大きな救いです。

 

一刻一秒を大切に見届けることができました。

 

 

その後、残念ながら全国ツアーの中止が次々に発表され、東京千穐楽が最後の公演となりました。

 

拡樹さんは本来ならば、全46公演中23公演(東京14、全国9)に主演するはずでしたが、残念なことに6公演となってしまいました。

 

コロナの現状を考えると致し方なく、キャスト・スタッフ・観客すべての命と健康を守るためにも賢明な判断だったと思います。

 

しかし、リトショに賭けてきた拡樹さんのことを思うと、とても悲しくて、残念でなりません。

 

ただ、社会情勢が日に日に混迷を極める今となっては、たとえ6公演であっても上演することができたのは奇跡のようにも思えます。

 

拡樹さんのシーモアが生きていたことを心にも記録にも残すことができて、本当によかった。

 

これから先、拡樹さんのキャリアをふり返るたびに、「奇跡の公演」として思い起こされるのではないでしょうか。

 

それほどすばらしいシーモアでした。

 

 

上演が実現したことに心より感謝いたします。

 

闇の中にまたたく光のような舞台でした。

 

 

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Melampodium

 

『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』のテーマ、あるいは拡樹さんの……

 

リトショの歌詞には、「報い」というキーワードが何度も登場します。

 

スキッド・ロウ』では、「報われない町」

 

『僕のために』では、「報われない思い」

 

『誰も予測不可能』では、「報われない毎日」……

 

まるで暗示するかのように、くり返し歌われます。

 

そして二幕の大曲、『柔和なる者は受け継ぐ The meek shall inherit the earth』にいたるのです。

 

この曲のタイトルは、新約聖書、マタイによる福音書の一文です。(5章5節)

 

エスが山の上で弟子たちと群衆に語った「山上の教え(垂訓、説教)」のひとつなのです。

 

「山上の教え」の中でも有名なのが、「幸福とは何か」について語っているところです。

 

「〇〇は幸いである」という8回のくり返しで、そのうちのひとつ、

 

『柔和な者たちは幸いである。その者たちは地を受け継ぐ』

 

という教えが、曲のタイトルになっているのです。

 

柔和であれば、最終的には地を受け継ぐことができる、つまり、良いことがあって報われるという意味です。

 

聖書でも、「喜べ、天においてあなたがたの受ける報いは大きい」と続いています。

 

柔和であれば、いつか報われますよ、という教えなのです。

 

ここで、どうやら「報い」がリトショのテーマらしいということがわかります。

 

ただのコメディではなく、恋愛物でもなく、なにやら聖書を背景にした深いテーマがありそうだということが……

 

でも「報い」には、良い報いと悪い報いがありますよね。

 

シーモアが受ける「報い」とは一体どちらなのでしょうか。

 

答えは、次の全曲レビューで……

 

👓 👓 👓

 

リトショのお稽古映像で、拡樹さんはブロッホが描いた「山上の教え」の絵がプリントされた上着を着ていました。

 

それを見たときは、さすが……と、ちょっと嬉しくなりました。 

 

 

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Sermon on the Mount by Carl Bloch (1877)

 

全曲レビュー ACT1 あらすじ

 

※日本語版の正確な歌詞はプログラムに載っている2曲以外は不明です。手元にある英語版の歌詞と劇場で聞いた記憶を元に、大意を書いています。

 

※楽曲の邦題はプログラムから。東宝モールで4/30まで通販中です。

「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」 | 東宝 モール

 

※日本語版の音源は残念ながらないので、ブロードウエイ版の試聴ページをご紹介しますね。 

Little Shop of Horrors (Broadway Cast Recording)

Little Shop of Horrors (Broadway Cast Recording)

 

バンド

 

クリエにはオケピがないので、バンドは上手袖にいました。

 

ドラム、パーカッション、ベース、ギター、キーボード、トランペット、サックス、フルート。

 

迫力のあるとても良い演奏でした。

 

後述しますが、ある箇所で他のミュージカルのモチーフをアレンジして入れていたのも粋でした。

 

カーテンコールで、舞台上のキャスト全員が上手を見上げてバンドを紹介するとき、拡樹さんが楽しそうにトランペットを吹くマイムをしていたのも印象に残っています。

 

  

開演前

  

開演前から、舞台は既にアメリカのスキッド・ロウというさびれた町でした。

 

下手に酔っ払いがひとりいて、ぶつぶつと何かよくわからないことをつぶやいているのです。

 

開演時間になると彼は上手に消えていくのですが、千穐楽の日は、はける寸前に「…千穐楽!」と言ったので、大きな拍手が起こりました。

 

拍手しながら、切ない想いが胸をよぎります。

 

これが千穐楽、最後なのだ、しっかり見届けなくては、と意識を集中させました。

 

舞台セット(Toho公式Facebookヘのリンク)

 

前説

 

諸注意のアナウンスは、毎回、シーモアがしていました。

 

これはとても素敵な演出だと思います。現実的な諸注意事項と、夢である舞台をつなぐ良い架け橋となっていました。

 

それに、拡樹さんの声ならみんな集中して聞きますからね!

 

まだ人前で話すことに慣れていないシーモアが、おどおどしながら、時にジョークをまじえて、いろいろと教えてくれました。

 

(コロナ対策で各所に消毒液があることなども……)

 

シーモアの声を聞いているうちに心が少しずつ現実世界から離れていって、夢の世界に近づいていくのです。

 

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千穐楽

 

1. リトル・ショップ・オブ・ホラーズ Prologue/Little Shop of Horrors

(ロネット・シフォン・クリスタル)

 

 

プロローグのナレーションが終わると、ロネット・シフォン・クリスタルが舞台セットの2階に華々しく登場し、テーマソングを歌いながら上手の階段を下りてきます。

 

ある時はコーラスガール、ある時はスラムのストリートキッズ、ある時は進行役……姿を変えながら縦横無尽に活躍する三人は、本作の影の主役です。

 

登場人物の全員とからみ、歌う曲もシーモア(12曲)の次に多い11曲。

 

この物語は三人の歌ではじまり、三人の歌で終わりを迎えるのです。 

 

彼女たちは「マクベス」でいうと三人の魔女なのではないかと思います。

 

プロローグで「すべてを知っている三人」と紹介されることからも、そんな気がするのです。

 

 

メロディは明るくてポップ、歌うと楽しくなるキャッチ―な曲なのですが、歌詞にはどこかホラーめいた気配があります。

 

「何か目に見えない恐ろしいものが忍び寄ってきて、逃げられなくなるよ……今ならまだ間に合うから、早く逃げて!」と予言しているのです。

 

40年近く前につくられた作品であるにも関わらず、「LSOH」にはこのように、まるで今の世相を反映しているようなところがあります。

 

そしておそらく、いつの時代でもそう感じられるような普遍性があるからこそ、長く上演され続けてきたのではないかと思います。

 

PVの冒頭の曲です(TohoChannel公式)

 

シーモア登場

 

お店の裏から何かが割れる大きな音が聞こえて、店長のムシュニクは怒ります。

 

店員のシーモアが植木鉢を割ってしまったからです。しかも何度も!

 

シーモアはあわてて(下手から)植木鉢を入れた大きな箱をかかえて登場しますが、つまづいて派手にころんでしまい、箱を大きく上に放り投げてしまいます。

 

中央の床に、ぽかんとした表情のシーモア

 

かわいそうに、突然ころんだので、一瞬、何が起こったかわからなくなってしまったんですね。

 

うなだれるシーモア

 

思い切りのいい大きな転倒と繊細な表情のうつろいから彼の心の声が伝わってきました。

 

ああ、またやってしまった……僕はなんてダメな奴なんだ……

 

シーモアが不器用で、何をやってもうまくいかない人であることがよくわかります。

 

コミカルでいて、どこか切ない。

 

不器用な主人公らしいパーフェクトな顔見せでした。

 

 

2. ダウンタウンスキッド・ロウSkid Row (Downtown)

シーモア・オードリー・ムシュニク・ロネット・シフォン・クリスタル・ホームレス)

 

曲が始まる前、ムシュニクと三人娘が上手側で口論しています。

 

シーモアは(下手にある)店内の薄暗がりで植物のお手入れをしているのですが、その芝居、マイムがこまかくて、シーモアの性格がよくあらわれていました。

 

お店の隅に、植木鉢がならんだ古い棚があります。(この棚は、のちほど大変身するので注目してください)

 

シーモアは植物にスプレーで霧を吹きかけたり、葉っぱを拭いたり、土を指で押してならしたりしていました。

 

さらに、マイムで土を少し口に入れて味の確認をしたのです!

 

地味を調べていたのでしょう。表情から察するに、まずまずの味だったのではないかと思います。

 

シーモアが植物が好きで、研究熱心だということが伝わる、良い芝居でした。

 

(拡樹さんはきっと、植物について熱心に調べたのでしょうね!)

 

 

スキッド・ロウ」は、歌う人の人生が出る曲です。

 

この街がいかに貧しくて、“報われない町”であるかを表現する歌なのです。

 

(はい、ここで出ました。「報い」というキーワード)

 

この一曲で物語の背景を説明しつつ観客の心をつかんでスキッド・ロウに連れて行かなくてはなりません。

 

つらく苦しい日々の暮らしについて、群衆が歌い、ヒロインのオードリーが歌い、盛り上がったところで初めて主人公のシーモアが歌う曲なのです。しかもソロで! 

 

シーモアは歌います。

 

ぼくは貧乏で、捨てられた子で、ゴミみたいな存在で、こき使われるだけのみじめな人生だった。

 

そして、「この酷い町から抜け出したい……!」と、何度も何度もくり返すのです。

 

シーモアの魂の叫びが、とても心に響く……響かせないといけないソロです。

 

シーモアの第一声は、英語だと「Poor」

 

貧しい、みすぼらしい、哀れ、劣っている……などのネガティブな意味を内包しています。

 

一音でシーモアのすべてがあますところなく表現できる、英語ならではの歌詞です。

 

どう翻訳されるのか興味があったのですが、「ああ……」という嘆息でした。

 

日本語だと、一音に意味のある言葉を当てはめるのが難しい。

 

嘆息ひとつで「貧しい・みすぼらしい・哀れ・劣っている」というすべての意味を表現するのは難しいと思うのですが、拡樹さんの第一声にはシーモアの「Poor」な人生が出ていました。

 

ここは、役者ならではの良さが生きる場面ではないでしょうか。

 

今まで数えてきたいくつものため息が、おのずと生かされていたのではないかと思います。

 

実のところ3月21日は、この「ああ……」が少し弱くて、ソロ全体も「もっとできるはず」という印象だったのですが、千穐楽では明らかに進化していてものすごく良くなっていました。

 

その一音のみならず、最後まで別人のように歌心のあるソロだったのです。

 

変化に驚くと共に、とても嬉しくなりました。

 

音程が良かったことをまず褒めたい! 

 

声もよく出ていました。

 

「芝居から役の人生や背景が伝わってくる」というのは、とりたてて賞賛するようなことではなく、プロの役者なら当然のことかと思います。

 

拡樹さんならそれくらいのことはできるでしょう。

 

でも、こんなにすばらしく歌うのを聞くのは初めてだったので胸を打たれました。

 

ミュージカルとして聞かせる力のあるソロでした。

 

歌が物語っていた。

 

シーモアの魂の叫びが、まっすぐに伝わってくる "歌" だったのです。

 

 

歌い終わったあと、拡樹さんも手ごたえがあったのではないかと思います。まとう空気が違っていました。

 

もし公演が最後まで続いていたとしたら、さらに成長していって、シーモアは拡樹さんの代表作になったのではないかと思います。

 

 

女神

 

シーモアのソロに「ぼくは女神に祈る」という言葉が出てきました。

 

報われない町スキッド・ロウから抜け出したいと、"女神" に祈っているのです。

 

(拡樹さんが力をこめて歌う部分だということもあり、特に印象に残りました。)

 

キリスト教徒、またはユダヤ教徒アメリカ人ならここは「神」に祈るだろうという局面なので、聞いた瞬間、ふしぎな気持ちにとらわれました。

 

女神というと、キリスト教的には異教徒のイメージがあるからです。

 

シーモアは他の宗教をもっているという設定にしたのだろうかと一瞬思いました。

 

原語の歌詞を見ると、「ぼくが行き詰っていることを誰かLady Luckに伝えて!」と書かれています。

 

この「Lady Luck」を「女神」と訳したわけですね。「幸運の女神」という意味でしょう。

 

音数の問題で「女神に祈る」にしたのかもしれませんね。

 

この「Lady Luck」は、伏線にもなっています。

 

原語では、シーモアは一幕後半のソロ曲『突然の変化 Sudden Changes』で、「Lady Luck があらわれてぼくを見つけてくれた」と歌っています。

 

ここを日本語では、「女神が微笑んだ」という歌詞にしていたのです。

 

 

3. ダ・ドゥー Da-Doo

(ロネット・シフォン・クリスタル) 

 

 

三人娘の歌にのせて、シーモアはオードリーⅡをどうやって入手したのかを語ります。

 

突然、皆既日食になってしまった日に、中国人のお店で見つけたと。

 

シーモアは変わった植物を育てるのが好きなのです。

 

コミカルで楽しいシーンなのですが、オードリーⅡが謎めいた存在であることもわかります。

 

映画では回想シーンとして映像で再現されますが、舞台ではシーモアの語りのみ。演技力が試される場です。

 

拡樹さんはコミカルに、時にミステリアスに、臨場感たっぷりに演じていました。

 

 

シーモアの眼鏡(1)

 

拡樹さんは、時々、眼鏡を使ったいいお芝居をしていたので、思い出せるかぎり書いておきますね。

 

「オードリーⅡを本で調べたけれど何の植物か特定できなかった」という会話をしていたときに、眼鏡を片手で少し持ち上げました。

 

その瞬間、目がギラッと黒光りして、表情が変わり、植物オタクの雰囲気が非常によく出ていました。

 

植物が大好きだから、植物の話になると一瞬、夢中になって目つきが変わるのだと思います。

 

 

シーモアとお金

 

シーモアは、同じ店員のオードリーのことが気になっています。

 

でも、オードリーはサドの歯医者オリンとつきあっているのです。

 

店長のムシュニクから「なぜあんな酷い男と?」と問いつめられると、オードリーは「稼ぎがいいから」だと答えます。

 

その時、シーモアは静かにショックを受けていました。

 

ぼくは何をやってもダメな奴、おまけに、稼ぎもない……と悲しくなってしまったのですね。

 

拡樹さんの繊細な芝居から、シーモアの胸の痛みが伝わってきました。

 

シーモアは貧乏な孤児で、児童養護施設からムシュニクに引き取られて、酷い待遇で店員としてこきつかわれています。

 

内気なシーモアは何も言いませんが、心の声が聞こえました。

 

「お金さえあれば、オードリーはふり向いてくれるのかな……?」

 

「でも、ぼくには稼ぎがないから……」

 

お金が目当ての女なんてやめておきなさい!と全力で止めたくなるのですが、不幸なことに、そんなアドバイスをしてくれる人は彼のまわりにはいないのです。

 

原語では、シーモアは「Boy’s Home」から引き取られていました。男の子だけの施設で育ったという意味です。

 

まわりに女の子は誰もいなかったことでしょう。

 

初めて出会った、「やさしくしてくれる女性」がオードリーだったのです。しかも毎日会っているのだから、好きになってしまったのでしょう。

 

このことは、のちの大きな伏線となります。

 

 

3. グロウ・フォー・ミー Grow For Me

シーモア

 

シーモアの見せ場のひとつであるソロ曲です。

 

オードリーⅡを店頭に飾っていたらお客が惹きつけられて繁盛することがわかったのですが、弱い植物なのですぐにしおれてしまいます。

 

店長のムシュニクから元気に育てるように命令されて、シーモアは困ってしまいます。

 

「水も肥料もあげてるのに、どうして元気になってくれないの?」と、報われない気持ちを切々と歌います。どうしたら花を咲かせてくれるの? 僕のために大きくなって!

 

はい、「報い」、再び出てきましたね、キーワード。

 

この時までのシーモアは、報われない子なのです。

 

 

内気でひとみしりなシーモアは、人と話すのが得意ではありません。

 

でも、大好きな植物とは話せるのです。心をこめて、切々と語りかけます。

 

拡樹さんの歌い方からすると、シーモアはいつも植物の世話をしながら語りかけているのかもしれません。「おはよう」「元気になったね」「お水、おいしい?」「たくさん飲んで、大きくなってね」……

 

特に、オードリーⅡは弱い植物なので、シーモアは弱い自分を投影して、より大切に育てているのかもしれませんね。

 

オードリーⅡがシーモアの血を欲しがっていることに気づいたシーモアは、指を切って血を与えます。

 

この後、オードリーⅡはシーモアの血を飲んでどんどん成長していくことになるのです────

 

 

拡樹さんは、おそらくこのソロ曲を何度も何度も練習してきたのではないでしょうか。

 

3月21日に初めて聞いた時、想像していたよりも良かったので大きな拍手を送りました。

 

あまりレガートにせずに、よりセリフを語るようにして歌っていたのが功を奏していたのではないかと思います。

 

ただ、「この血さえもー」と、のばすところが惜しかった。

 

でもそこも、千穐楽では少し進歩していました。

 

そしてゲネプロを収録したPVとくらべると、6公演目にして全体的にとても良くなっていたことも強調しておきたいです。

 

 

5. 誰も予測不可能 Ya Never Know

(シーモア・ムシュニク・ロネット・シフォン・クリスタル)

 

 

次のシーンでは、シーモアはなんとラジオに出演しています。

 

オードリーⅡのおかげでお店は大繁盛して、シーモアは街の人気者になってしまったのです。高速展開がおもしろい。

 

舞台の上手側でシーモアラジオDJが話していて、下手側でムシュニクと三人娘がラジオを聞いています。

 

(この時、ラジオ局のスポットライトが二人の表情がよく見えないほど暗いのです。奇妙なほど明るくハジけたDJの声のトーンと対照的な暗さ。顔を見ようとしても、よく見えず……薄気味悪い気配を漂わせるためなのかもしれませんね)

 

シーモアの血を飲んで少し大きくなったオードリーⅡはマペットに変わっていて、拡樹さんが右腕を入れて操作しています。

 

オードリーⅡの鉢を抱えている右腕は、実はマペットの一部なのです。

 

初見時は中央より少し後ろの列の席だったのですが、そうと気づかなかったほどよくできていました。(千穐楽は前方列だったので気づきました。)

 

商売繁盛で浮かれるムシュニクの個性全開なソロに続いて、ロネットのソロで私の一番好きな曲がはじまります。(以前からメロディとハーモニーが好きな曲でしたので、東宝版でも期待していました。)

 

想像もしたことがないような幸運が舞い込んできたシーモア

 

貧乏で、不器用で、“報われない”日々を送っていたシーモアが、ある日突然、街の人気者になってしまった!

 

今なら、不可能はない!

 

三人娘がシーモアをかこんで「不可能はない」と歌うところで、シーモアはシンバルに合わせてものすごい大ジャンプを、しかも4回もくり返すのです!

 

空中を走っているように脚を前後に大開脚して、腕を大きくふって、毎回違うポーズで飛ぶ。

 

「ふーか(ジャンプ!)のーう(ジャンプ!)はーな(ジャンプ!)いー(ジャンプ!)」

 

「誰にも止められない!」

 

突然の幸運の追い風に吹かれて、未来へ大きくホップステップジャーンプ!

 

今なら、空も飛べるはず!という勢いで。

 

それまでもシーモアは動き回っているので、ものすごく疲れると思うのですが、さらにこの直後に三人娘とハモらなくてはならない。

 

しかも「いつか報われる、誰も予測不可能」という「報い」が入った歌詞で、曲の最後の重要なフレーズです。

 

歌としても、聞かせどころです。三人の女声にシーモアの男声が一本入ることによってハーモニーが締まり、深みが出るようにしなくてはならない。

 

21日は、シーモアの声が女声にかき消されてしまっていたのですが、千穐楽では、女声と調和しつつも主役らしく明るく深く響いて聞こえました。

 

とても良くなっていたので、ひときわ大きな拍手を送りました。

 

👓 👓 👓 

 

拡樹さんは本当に体力があると感嘆しました。

 

攻めの姿勢も凄い。

 

一般的に、「歌が苦手」という意識のある人は、劇中あまり動かないのではないでしょうか。

 

動くとますます歌えなくなってしまうので、できるだけ体力を温存して歌に集中したいところでしょう。

 

体勢もできるだけ変えないようにして、歌う直前は一番きれいな声が出せるポジションを保とうとするのではないかと思います。

 

ところが拡樹さんは、そういう保身は一切考えていないように見えました。

 

ガンガン飛んで全力投球。まったく守りに入っていません。攻めていました。

 

すばらしい。

 

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劇場の入り口で配られた3Dメガネ

  

6.「どこかにある緑に囲まれた場所 Somewhere That's Green」

(オードリー)(シーモア映像) 

 

オードリー役の妃海風さんの歌は、特にソロが聞きごたえがあって光っていました。コメディシーンもとても面白かったです。

 

新演出

 

オードリー最大の見せ場であるソロ曲ですが、彼女の空想の中でシーモアが大活躍します。

 

3Dメガネを使った新しい演出に驚かされました。

 

舞台上の大きなスクリーンにシーモアが立体映像として登場し、観客もサングラス(3Dメガネ)を使って空想の中に入っていくのです。

(一幕ではこの曲の時だけ使用しました。)

 

おそらく「LSOH」では世界初の演出なのではないかと思いますが、新しいと同時に、原点にもどったような小気味よさを感じました。

 

なぜなら3Dメガネといえば、立体映画の黄金時代である1950年代を思い起こすからです。(ヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ!」などの名作が誕生しました)

 

「LSOH」の最初の映画は1960年公開で、50年代の風物が描かれています。

 

3Dメガネを使った演出は、50年代が舞台の作品に合っているのではないでしょうか。

 

古き良き時代、映画に行くことが人々の最大の娯楽であった時代へのノスタルジーを感じました。

 

 

歌詞の深い意味

 

オードリーは、「シーモアみたいな人と結婚して郊外の小さな家で暮らしたい」というささやかな夢について歌います。

 

原語の歌詞では、1950年代アメリカの具体的なアイテムがいくつも登場します。

 

日本語の歌詞はプログラムに載っていないので正確なところはわかりませんが、二度聞いたかぎりでは固有名詞は出てこなかったように思います。

 

おそらく、日本人にわかりやすい訳にしたのでしょう。

 

オードリーのことを理解する手がかりになると思うので、原語の歌詞に出てくる象徴的なアイテムの中から少しだけ紹介しますね。

 

 

👓 👓 👓

 

そっくりなトラクト・ハウスが建ち並ぶ郊外の住宅地……

 

小さな家は本物の金網フェンスで囲まれていて、

 

パティオにはグリル、シンクにはディスポーザー、洗濯機と乾燥機とアイロン……

 

彼は芝刈りや除草が大好き……

 

私はドナ・リード(当時の人気女優)みたいな姿で、ベティ・クロッカー(有名な食品広告だった理想の主婦像)みたいなお料理上手……

 

パインソル(有名な万能クリーナー)の香りの中でお掃除も完璧にするの……

 

どこかにある緑の場所で……

 

(当時の流行りの)冷凍食品ディナーを食べたら、

 

9時15分にお休みするまで彼と寄り添って、

 

ものすごく大きな12インチのテレビで(人気シットコムの)「アイ・ラブ・ルーシー」を見る……

 

私は彼の「12月の花嫁」で、彼は「パパは何でも知っている」みたいなパパになる(どちらも人気シットコム)……

 

子供たちが(人気子供番組の)「ハウディ・ドゥディ」を見ていたら、美しい夕日が沈んでいく……

 

雑誌「Better Homes and Gardens(良き家庭と庭)」の写真みたいな生活……!

 

スキッド・ロウから遠く離れた、どこかにある緑の場所に、いつか行ってみたいの……

 

Better Homes and Gardens

 

このように、オードリーの夢はテレビや雑誌にのっているようなことばかりです。

 

オードリーが、流行の商品、広告、結婚、家庭生活……そういったものにあこがれる女性だということがわかります。

 

見渡す限り同じような家が並んだトラクト・ハウジングのひとつになりたいという夢には、どこか悲哀も感じられます。

 

彼女がとても狭い世界に生きていて、マスコミに与えられる画一的な "理想の家庭" 以外のことは夢想だにできないという意味なのですから。

 

そして、くり返し歌われる「どこかにある緑の場所で……」というフレーズは、彼女の悲しいラストシーンへの伏線にもなっています。

 

一見、夢夢しい歌のようにも見えますが、実は、作者によってダークな皮肉もこめられているのです。

 

 

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空想のシーモア

 

空想シーンでは、拡樹さんのひとり芝居が面白すぎました!場内大爆笑。

 

(オードリーは舞台上で歌っていて、スクリーンに登場するのはシーモアだけです。)

 

重要なのは、このシーンはオードリーの妄想なので、実際のシーモアとは違うという点です。

 

シーモアの外見をしてはいますが、現実の彼ではなく、オードリーの目から見た「理想のシーモア像」なのです。

 

そのため、シーモアが実際にはしないようなことでも、ここではしています。

 

その違いを、拡樹さんは絶妙に演じ分けていました。

 

 

まず、お庭に、シーモアが芝刈り機を押しながら登場します。

 

観客は3Dメガネをかけているので、シーモアは画面を飛び出して文字通りこちらに向かってやってくるのです。(どんどんどんどん大きくなって……)

 

楽しそうに笑いながら芝刈り機を押してくねくねと歩いてくるのですが、その動きが!!!面白すぎました。

 

さらに最後に、(シーモアから見て)左側にむかってバッチーン!と大きなウィンクをして去っていくのです。(左目を閉じていたような気がしますが、顔の動きも大きかったので両目ウィンク的な残像も……)

 

たぶんオードリーが上手側にいたから左にウィンクしたのではないかと思うのですが、既にシーモアはステージを飛び越えて客席まできてしまっているので、左の観客にウィンクするおもしろい人になっていました。傑作。

 

見ていない方のためにあえて例えるとすれば、羽海野チカさんの漫画の妄想ギャグシーンに出てきそうなキャラでした。

 

ハチミツとクローバー」の森田忍が妄想ギャグシーンの作画で、「アハハハハ…アハハハハ…」と笑いながら芝刈り機をくねくね押して迫ってきて、最後にバッチーン(大きなハートマーク)!とウィンクするのを想像してみてください。あれに近い。

  

 

次は、おやすみの時間のシーンです。

 

パジャマでベッドに横たわるシーモアを、ずっと上から撮っています。

 

シーモアは、おずおずとブランケットを少しだけめくって、カメラ目線で両手で手招きするのですが、その手招きの仕方が!すごく変でおもしろかったです。

 

両手を上に向けて小さくクイックイッと手招きするのですが、誘っているというよりは、スポーツ選手か審判のハンドサインのようでした。

 

表情も、ちょっと上目遣いで、いぶかしそう。

 

”堅さ”がおもしろく表現されていました。

 

 

最後は、サンタクロースです。

 

「子供が生まれて、クリスマスにはパパがサンタクロースになる」という日本語版のみにある流れで、シーモアはサンタクロースの仮装をして大きな白い袋をかついで登場し、とてもやさしそうにカメラ目線で微笑んでいました。

 

 

これらはすべて、実際のシーモアではなくオードリーの想像です。(実際のシーモアは恥ずかしがり屋さんなので、あんなふうにウィンクしたりはしないでしょう。)

 

オードリーにとって、シーモアはこういうイメージの人なのだということが伝わります。

 

演出としても新しくてすばらしかったですし、拡樹さんの面白いひとり芝居が見られてとっても楽しかったです。

 

拡樹さんはコメディの才能もあります。

 

👓 👓 👓

 

リトショのミュージカルは、80年代のアメリカ人が50年代をふり返って製作しました。

 

古き良き時代へのノスタルジーを漂わせつつも、大げさなコメディにしておもしろがっているところがあります。

 

ミュージカル映画のオードリーの空想シーンは、その最たるものだと思います。コメディシーンなのです。

 

拡樹さんの空想シーモアは、まさにそういった空気感のコメディで、最高でした。

 

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オードリーの衣装を着たクリエちゃん。手にした花束はメランポジウムでしょうか…

 


7. 改装のため休業 Closed For Renovation

シーモア・オードリー・ムシュニク)

 

 

拡樹さんのソロの中では、この曲のソロは比較的、声が当たっていてよく響いていたと思います。

 

「お店を改装するために今日はお休み」だと説明する歌です。 

 

オードリーⅡのおかげでムシュニクフラワーショップは大繁盛して、相当、利益が出たのでしょうね。

 

お店の下手側にあった古い棚が、なんとガラスの扉のあるお花用の冷蔵ショーケースに変わっています!

 

高価な設備を投入できるほど潤っているということですね。

 

ムシュニクさんもほくほく顔。

 

突然の幸運に三人とも幸せいっぱい、明るく楽しい三重唱です。

 

鈴木さんと妃海さんは声質も発声も違うのですが、ベテランの岸祐二さんが入るところで良いハーモニーになっていました。

 

岸さんの音域の広さと安定感はどの曲でもすばらしかったです。

 

 

8. 歯医者さん Dentist

(オリン・ロネット・シフォン・クリスタル)

 

 

オードリーの恋人、サドの歯医者オリン・スクリベロが華々しく登場し、三人のストリートキッズと歌い踊ります。

 

オリンはオードリーを殴ったり悪口ばかり言う酷いDV男です。

 

しかも、子供の時から動物を虐待するのが大好きなサドだったので、ママから歯医者になるといいと勧められたという驚きの職業選択ソングを披露します。痛みで苦しむ人を見られるから天職だと。酷い。

 

ハワード・アシュマンの発想が凄い。

 

石井一孝さんのオリンは、歌も芝居も、そのままブロードウエイに立てるほどの完璧なオリンでした。

 

(オリンの役者は通常、二幕で別の役も演じるのですが、その役も凄かったです!)

 

石井さんや岸さんのような実力のあるベテランの方々と一緒にお稽古して、舞台に立つことができたのは、拡樹さんにとってすばらしい経験になったのではないかと思います。

 

 

9. ムシュニクと息子 Mushnik and Son

シーモア・ムシュニク)

 

 

ムシュニクとシーモアがタンゴを踊りながらデュエットする楽しい曲です。

 

ムシュニクの強烈な個性をあますところなく表現する岸祐二さんのソロからはじまり、ドラマティックな芝居とコミカルなダンスで最高に盛り上がります。

 

ムシュニクは、シーモアがオリンにそそのかされて、オードリーⅡと一緒にお店を出て行ってしまうのではないかと誤解します。

 

出て行かれたらお金が入らなくなって困るので、ムシュニクは養子にしたいと言い出しますが、シーモアは驚いて断ります。

 

常日頃、ムシュニクに酷い扱いを受けてきたのですぐには信用できないのでしょう。

 

自己評価が低いので、「ぼくに家族ができるなんて、そんな幸運あるはずがない」と思ってしまったのかもしれませんね。

 

するとムシュニクは、「断ったら死ぬ!」とピストルを取り出したのです。

 

この時、『レ・ミゼラブル』の「ジャベールの自殺」の不穏なイントロがアレンジされて演奏されました。

 

ブロードウエイ版には入っていません。

 

岸さんがジャベールを演じていたからではないかと思いますが、この場にもぴったりで面白かったです。

 

これはムシュニクの狂言であって、彼は自殺する気などさらさらないのです。

 

何も知らないシーモアは真剣ですが、実質コメディシーンなのです。

 

そこへシリアスで不穏なイントロが入って劇的に盛り上げるので、面白い効果が生まれていました。

 

 

シーモアは自殺しようとするムシュニクにびっくりして承諾し、養子になります。 

 

ふたりはタンゴをコミカルに踊りながらデュエットするのですが、シーモアは体が硬いようで、グキッ!バキッ!と効果音が入ります。

 

いかにも不器用に踊らなくてはいけない演出なのですが、拡樹さんはとても上手に不器用でした。

 

(あのダンスはあくまで演技なのです。不器用なシーモアが急に華麗に踊り出したら変でしょう)

 

(ただ、拡樹さん自身も体が硬い方なので、その個性も多少は生かされていたのかもしれませんね。)

 

 

緊迫感のある会話を交わしているような二重唱も迫力がありました。

 

拡樹さんはとてものびのびと歌っていて、シーモアの曲の中ではこの曲が一番、安心して聞くことができました。

 

最後に伸ばすところのハーモニーもとても良かったです。

 

岸さんがお稽古中から色々と配慮してくださっていたのではないかと思います。

 

息の合った楽しいデュエットでした。

 

 

10. 突然の変化 Sudden Changes

シーモア

 

メロディは、オードリーの『どこかにある緑に囲まれた場所』と同じです。(空想シーモアが登場するあの曲です!)

 

オードリーが「シーモアはかわいい」と歌ったのと同じメロディで、シーモアはオードリーⅡにむかって「かわいいペチュニア」と歌うのです。

 

「きみのおかげで幸運の女神がぼくに微笑んでくれたから、お父さんができたよ」と、喜びで胸をいっぱいにさせながら……

 

なんてかわいい人なのかしら、と、観客も思う瞬間です。

 

見かけではなく、心が美しい、かわいい人なのだと、音楽からも伝わってきます。

 

同じメロディをくり返し使うこと、リプライズで生まれる効果ですね。

 

実は、シーモアはオードリーⅡに利用されているだけなのですが、そうとも知らず、オードリーⅡのおかげで幸運がやってきたと無邪気に信じこんでいるのです。

 

しかし、叶わない夢を見ているオードリーの歌と同じだということは、シーモアの「幸運」も実は夢で、本当は叶っていないのだと暗に示しているのかもしれません。

 

良いことが起こって報われたように見えるシーモアですが、指はバンドエイドだらけです。

 

オードリーⅡに血を与え続けているので、いつも貧血でくらくらしています。

 

不穏な気配をただよわせながら、物語は一幕のクライマックスへと向かうのです────

 

 

11. 持ってこいGit it (Feed Me)

シーモア・オードリーⅡ・ロネット・シフォン・クリスタル)

 

 

拡樹さんにとっては、この曲の最初のソロが最もチャレンジングだったのではないかと思います。

 

オードリーⅡから「人を殺して肉を食べさせろ。そうすればおまえの望みを何でも叶えてやる」と迫られて葛藤する重要な場面です。

 

ソロは「ぼくにはわからない……」から始まり、欲望と理性が戦って苦悩します。

 

ストレートプレイであれば、そういう芝居は拡樹さんの得意中の得意なのですが、これはミュージカル。

 

拡樹さんにとっては難所だったのではないかと思います。

 

なぜなら、シーモアの歌の中でここだけが唯一、最初から最後まで誤魔化しの利かないロングトーンだからです。

 

美しいレガートで、たっぷりと聞かせなくてはならない。

 

しかもソロなので、他の方のお力を借りるわけにもいきません。

 

3月21日に初めて聞いたときは……残念でした。

 

仕方がありません、難しいのです。

 

拡樹さんは動きながら歌っていたのですが、ここだけは、発声しやすい体勢で歌ってもいいのではないかと思いました。

 

動かなくても、まっすぐ立っているだけでも、歌で表現できるところだからです。

  

 

全曲の中で、このソロがもっとも心配なところでしたので、千穐楽では近づくにつれてどきどきしてきて、祈るような気持ちで聞いていました。

 

オードリーⅡから「欲望」と「理性」の二択を迫られたシーモアは、苦悩しながらフラワーショップを出て、ステージの前方(客席でいうと19番の前)に立ちました。

 

そして、やや上をまっすぐに見つめながら歌い始めたのです。

 

これまでの発声とはまったく違っていました。声が違う。

 

明らかに、歌に集中していることがわかりました。オーラが違う。

 

あまりの違いに、私は胸を打たれました。

 

前回とは目指すところへの "意識" が違うことが、はっきりと伝わってきました。

 

しかも、ものすごく声が大きくて……

 

胸が熱くなった瞬間でした。

 

 

 

あの時のことを思い浮かべると、ふしぎなことに、彼は眼鏡をしていません。

 

記憶の中では、シーモアの姿を作っていたはずの眼鏡やヘアメイク、すべてが霧散して、素顔の拡樹さんが歌っているのです。ものすごい顔をして。

 

 

 

デーモン閣下

 

オードリーⅡの声はデーモン閣下が演じているのですが、当て書きしたのではないかと思うほどの適役でした。

 

しかも一人称は閣下と同じ「吾輩」なのです。(おそらくリトショ史上初めての一人称でしょう!)

 

歌はロック。デーモン閣下の個性が全開でありながら完璧にオードリーⅡだという当たり役でした。

 

デーモン閣下のオードリーⅡは、ふてぶてしい怪物ではあるのですが、ちょっと子供っぽい声を出すときもあって、どこか愛嬌があります。

 

声は録音だったのですが、初見では、閣下が舞台裏で声を当てているのではないかと思うほど違和感がありませんでした。(LSOHは、そういう演出の時もあるのです)

 

動きと声のタイミングがぴったり合っていて、シーモアとの会話も自然でした。

 

シーモアと人形操演と音響のリハの成果なのではないかと思います。

 

拡樹さんはインタビューで、「デーモン閣下とハモれるのが楽しみです」と語っていましたが、最高にロックなハーモニーでした。

 

 

オードリーⅡは、シーモアからもらう血だけでは満足できなくなって、人間の肉を食べさせろと騒ぎ立てます。

 

シーモアは拒否するのですが、オリンがオードリーに乱暴しているところを目撃してしまい、怒り心頭で爆発してしまいます。

 

オードリーにあんな酷いことをするなんて!

 

あいつの肉なら食べさせてもいい……!

 

オードリーⅡとシーモアが暴れまくるデュエットは、すさまじいビッグバンでした。

 

拡樹さんは怒りの芝居がとても上手なのですが、あんなに怒髪天を衝くのを見たのは久しぶりです。

 

天魔王以来かもしれません。 

 

 

 

シーモアの眼鏡(2)

 

この曲でも、拡樹さんは眼鏡を使った印象的なお芝居をしていました。 

 

オリンへの怒りが爆発した時に、突然、両手でバッと眼鏡を外して素顔を見せたのです。

 

後述しますが、二幕でも、あるシーンで眼鏡を外します。

 

ふたつのシーンの共通点は、「本気になった時」だと思います。

 

強い意志をしめすときに、眼鏡をとったのではないでしょうか。

 

内気で奥手なシーモアは普段は眼鏡の陰に隠れてしまっているけれど、本気になった時は眼鏡をとって心の奥まで見せる、ということなのではないかと思いました。

 

 

11. 今だ(それはただのガス)Now (It’s Just the Gas)

シーモア・オリン)

 

 

オリンを殺す決心をしたシーモアは、ピストルを隠し持って歯科医院にあらわれます。

 

シーモア対オリンの刺すか刺されるかという緊迫したシーンなのですが、石井一孝さんと鈴木拡樹さんという役者ふたりの芝居対決も凄かったです。

 

二人とも滝のような汗を流して熱演していました。

 

マイクが汗で水没して使えなくなった時のために、二つつけていたほどです。

 

稽古中からもの凄いことになっていたのではないかと想像してしまいます。

 

オリンはガス中毒で、いつもガスを吸ってハイになっているので、わけのわからないことを言い出します。

 

毎公演、アドリブ満載だったようです。

 

初めて観劇した時は、まだ何がアドリブなのかはわからなかったのですが、とにかく石井さんの尋常ではないパワーを感じました。

 

千穐楽では、オリンが突然「ここは地下室……俺は強盗犯だ……」などと言い始めてシーモアもわけがわからなかったかと思うのですが観客もわけがわかりませんでした。

 

オリンがひとりで盛り上がってシャドーボクシングでパンチしながら「キック!キック!」と言って、キックしながら「パンチ!パンチ!」と言って、シーモアがボソッと「逆だね」と言ったのが面白くて笑いました。間がいい。ナイスつっこみ。

 

オリンの宇宙服のようなガスマスクが外れなくて死にそうになってしまったとき、シーモアは助けるかどうか迷います。

 

ピストルで殺さなくても、ただ死ぬのを待っていればいいのではないかと……

 

シーモアが心の葛藤を歌っているときのオリンの声も凄かったです。

 

あんなガスマスクをかぶって倒れているというのに、背後できれいな線を描くように歌ったり、本当にハイになっているのではないかと思うほど猟奇的な高笑いを響かせます。

 

結局、オリンは笑いながら窒息して死んでしまいました。圧巻の演技。

 

 

シーモアは直接手を下しはしなかったのですが、見殺しにしてしまったのです……

 

 

 12. 一幕フィナーレCoda (Act 1 Finale)

(ロネット・シフォン・クリスタル)

 

暗闇の中でおどろおどろしい歌が流れ、シーモアはバラバラにしたオリンの死体をオードリーⅡに食べさせています。

 

恐ろしさに全身でビクビクと震えながらも、手や足を、ひとつずつつかみ、大きな口に放り込んで食べさせるのです。

 

オリンを直接殺しはしませんでしたが、死体を切断したことは確かでしょう。

 

あの内気でやさしいシーモアが、そんなことをするなんて……

 

怒りを爆発させたことでリミッターが外れて、何でもやれるようになってしまったのでしょうか。

 

欲望にエサを与え、これから一体どうなってしまうのでしょう……?

 

不安が闇に渦巻く中、オードリーⅡの勝ち誇ったような笑い声が響き渡り、一幕が終了しました。

 

 

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休憩時間は30分。通常より10分長く、充分に換気が行われます。

 

千穐楽は二幕の前説が特別ヴァージョンで、拡樹さんが生でナレーションをして最高でした。

 

長くなったので、次のページにアップしますね。

 

 

全曲レビュー ACT2 あらすじ

 

次ページに続きます。 

 

 

鈴木拡樹さんがシーモアに適役な3つの理由

 

次ページに続きます。


 

キャスト・スタッフ・バンドメンバー

 

キャスト

 

シーモア:鈴木拡樹/三浦宏規(Wキャスト)

オードリー:妃海風井上小百合(乃木坂46)(Wキャスト)

ムシュニク:岸祐二

オリン:石井一孝

オードリーⅡ:デーモン閣下

ロネット:まりゑ

シフォン:清水彩花

クリスタル:塚本直

酔っ払い、謎の中国人、花屋の客他:榎本成志

サングラスおじさん、DJ他、オードリーⅡ操作:高瀬雄史 

 

スタッフ

 

シアタークリエ ミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』

 

バンドメンバー

 

Piano Conductor:森亮平/野口彰子

Drums:中沢剛

Percussion:BUN Imai/益田和香子

Bass:岸徹至

Guitar:後藤秀人/佐藤優樹

Keyboard:明石敏子/古垣未来

Trumpet:中野勇介/菅谷隆介

Woodwinds:宮越悠貴

Manipulator:水野久興

 

公演概要

 

東京公演:

日比谷シアタークリエ

https://www.tohostage.com/little-shop-of-horrors/index.html

 

上演期間:

「2020年3月13日(金)~4月1日(水)、全28公演、鈴木拡樹さん主演は14公演」となる予定でしたが、新型コロナウイルス感染の予防および拡大防止のため、「3月20日(金)~3月27日(金)、 全12公演、鈴木拡樹さん主演は6公演」に変更されました。

 

※26日(木) は休演日です。 

 

※劇場では下記のような万全の対策がされていました。

https://www.tohostage.com/info20200318.html

 

※プログラムやグッズの劇場販売は予防のために中止され、東宝モールで3/25~4/30まで通販されました。飲食物の販売も中止されていました。

 

※観客もマスクを着用し、入り口で手の消毒、体温チェックをした上で観劇しておりました。

 

※東京公演の後は全国ツアー(山形、愛知、静岡、大阪)が行われ、全46公演(鈴木拡樹さん主演は23公演)となる予定でしたが、残念ながらすべて中止となりました。 

 

※再演が待たれます。 

 

  

ここまで読んでくださって、どうもありがとうございました。

ʕ ❛ᴥ❛ʔฅ~~💓

 

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2020年3月21日(金) シアタークリエにて