宇宙シロクマ

Tuscan Blue's blog

舞台どろろ 3月7日(木)東京初日 感想

どろろ掲載情報

 

鈴木拡樹さんの百鬼丸と『どろろ』という作品の凄さをひとつひとつあげていこうとしたのですが、思うところがありすぎて書けず、もう次の観劇日の前夜になってしまいました!!! 

 

次は12日のソワレ。ちょうど中日です。

 

その前に、初見の感想を少しだけ書いておきますねʕ^ᴥ^ʔฅ 

『舞台どろろ』3月7日(木)ソワレ

サンシャイン劇場

開演18:30

原作:手塚治虫

脚本・演出:西田大輔

脚本協力:小林靖子/吉村清子/金田一明/村越繁

主演:鈴木拡樹

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百鬼丸

 

 

風のように舞台にあらわれた百鬼丸は、何も見ておらず、何も聞こえていませんでした。

 

生まれたときに鬼神によって体の12のパーツを奪われてしまった百鬼丸を、鈴木拡樹さんはあざやかに体現していたのです。

 

もし百鬼丸だったらどう動くのか、手は、脚は、首は……熱心に研究されたのではないでしょうか。

 

観劇中に、「いつか座頭市がやれるのでは……?」と思うほどの役作りでした。10年後くらいには、きっと。

 

 

鈴木さんは他作品でも、まばたきをほとんどしないで演じることがありますが、今回はその気配すら感じませんでした。

 

まばたきのできない役とはいえ、その表現が凄かった。

 

何も映っていない目だったのです。

 

 

目の見えない演技、耳の聞こえない演技……

 

映像作品ならば、ワンカットの短い時間だけですが、舞台ではそうはいきません。

 

3時間という長丁場で、そのほとんどが激しいアクション、殺陣の手数は1000を越えるという苛酷な演出で、よくぞここまで……と感動する仕上がりでした。

 

鈴木さんの身体能力の高さに驚嘆するばかりです。

 

これほど身体能力が高くてアクションができる主演俳優は日本にはあまりいないのでは……?と思ったほどです。

 

しかし、鈴木さんの真に凄いところは、「アクションが凄い」ように魅せる演技力だと思います。

 

(実際、もの凄いのですが、それ以上の効果を生み出すのが演技力というものなので)

 

たとえば、三郎太との戦いのさなか、敵の円陣からパ・ド・シャのようにジャンプしたときなど、2メートルくらい飛んだように見えました。

 

また、仕込み刀で腕を封じられているときにも、高いジャンプをしたことに驚きました。

 

(腕がよく使えないと、ジャンプするのは難しいのです)

 

そして激しい殺陣のさなかに、強烈な飛び蹴りや回し蹴りをくり出していくのです……!まさに百鬼丸

 

鈴木さんの殺陣は腰を落として重心を低くすることが多いのですが、百鬼丸はそれほど低くしません。

 

まっすぐに立った体勢で、むかってくる敵の気配を察して次々に斬っていくことも多い。

 

その姿から、百鬼丸は生まれたときから目が見えず、刀を正式に習うこともなかったということがわかります。

 

義体の可動域にあわせて斬る方法を実地で身につけたのでしょう。

 

百鬼丸に、小ぎれいな型や流派などないのです。

 

 

百鬼丸にとって生きることとは、文字どおり、戦うことでした。

 

鈴木さんの殺陣からは、百鬼丸のこれまで生きてきた軌跡が見えます。

 

 

🍉 🍉 🍉

 

 

これだけ凄い役をこなし、座長という重責をになうのは、心身ともに大変な負担だと思います。

 

それを毎日、休憩時間わずか10分で3時間、マチソワ、さらにアフタートークも……体を休める暇もないのではないでしょうか😢

 

どうかお怪我のないように、心からお祈りしています。

 

 

🍉ここから先は、一部、内容について触れています🍉

 

 

「母」とは、「親子」とは

 

 

2幕で、百鬼丸は初めて実の母である縫の方と対面します。

 

口がきけるようになったばかりの百鬼丸は、「は…は……」と言って手をのばし、ふれようとするのですが、縫の方の告白を聞いて衝撃のあまり止まってしまいます。

 

ふれることが、できなかった……

 

その言葉は、まだ目が見えない百鬼丸にとって、突然、大きな拒絶の壁にたちふさがれたようなものだったからです。

 

行く先を失った手を、ゆっくりと降ろしていくさまが、とても切ない……

 

あのとき、百鬼丸は「産みの親」を失ったのだと思います。

 

 

その後、育ての親である寿海と再会し、別れの局面をむかえたとき、百鬼丸は彼の名をたずねます。

 

一緒に暮らしていたときは、名前を呼ぶことはできなかったので、知らなかったのです。

 

寿海は名乗ろうとしません。

 

でも、百鬼丸は、知っている、と言うのです。

 

 

そして、

 

 

「は は う え……」

 

 

と呼んで、

 

 

ふれたのです……!

 

 

その瞬間、涙がにじむのを感じました。

 

 

 

これはすばらしい脚本だと思います。

 

「舞台どろろ」のテーマは「親子」で、さまざまな親子のかたちが描かれています。

 

しかし、脚本家がもっとも書きたかったことは、ここなのではないでしょうか。

 

たとえ産みの母でなくても、

 

血のつながりがなくても、

 

そして女性でなかったとしても、

 

いつくしんで育ててくれた人こそが、魂の「母」なのだと。

 

 

それもまた、血縁のある親子と同じ「親子」なのだと。

                                                                                                                          

 

目も耳も口もきけない状態で育った百鬼丸だからこそ、真の「母」を見出すことができたのではないでしょうか。

 

先入観も建前も何も持っていない百鬼丸だからこそ、ものごとの本質を見極めることができたのです。

 

百鬼丸は生まれたときから「母」という言葉どころか概念すら知らないので、世間一般の「母」と言う存在も知りません。

 

それゆえ、これまでの人生で縫の方を恋しく思ったことはないはずです。

 

「家族のいる友人たちの中でひとり孤児として育ち、いつか母に会える日を夢見ていた」というようなケースとは違うのです。

 

そんな彼が、突然あらわれた人間を前に、「母」という概念のすべてを理解して、「母上」と呼んで泣いて抱き合ったりするのは、少々おとぎ話が過ぎます。

 

百鬼丸にとって「母」とは、産みの母である女性の縫の方ではなく、赤子のときから大切に育ててくれた血縁のない男性の寿海だったのです。

 

 

「舞台どろろ」は、家族のかたちやジェンダーの多様性に注目される今の時代にふさわしいテーマをもつ作品ではないでしょうか。

 

 

「アニメどろろ」と「舞台どろろ

 

 

「アニメどろろ」をごらんになっていない方に短く説明すると、「アニメどろろ」は非常に完成度が高い作品です。

 

脚本、演出、作画、音楽、音効……アニメーションのみならず、キャストの演技力が凄い。

 

レギュラーもゲストもベテランで、芝居がとても上手な子役、声優、俳優を配しているので、ドラマに厚みがある。

 

声だけで、奥行のある物語の背景が感じられるのです。

 

新しい「どろろ」の世界観をほとんど完璧に仕上げています。

 

見るたびに、匠の技に感じ入ってしまう作品です。

 

それを毎週、まさにリアルタイムで見ている最中におこなわれる公演が、「舞台どろろ」なのです。

 

 

演出家の西田大輔さんが、「漫画でしかできないことがある。アニメでしかできないこともある。舞台にしかできないことを、皆で。」と書いていらっしゃったので、舞台はアニメとは違う内容になるのではないかと思っていました。(2019年2月12日ツイートより)

 

アニメはアニメ、舞台は舞台……というように別のストーリー展開になるのではないかと。

 

ところが、1幕の流れは、完全に新作アニメ準拠でした。

 

劇中、アニメのオープニングテーマである女王蜂「火炎」も使用されます。

 

 

アニメではまだ2幕に該当する部分まで放送されていませんが、もしかするとこの先、舞台と同じ内容になるのでしょうか。

 

それとも、舞台とは違う展開になるのでしょうか。

 

「舞台どろろ」で気になったのは、いずれ百鬼丸どろろが恋愛関係になっていくような気配があったことです。(あえて最後にもってきて印象づける琵琶丸のセリフなどからそれがうかがえます)

 

しかし、どろろは本来、まだ子供です。

 

アニメでは今のところ、恋愛でも血縁でもない「バディ感」があってとても良いのです。

 

男女であっても恋愛におちいらずバディになれることを描いている作品が、理想的なバディ物ですばらしい。

 

私は、そんなふたりの関係性がとても好きなので、アニメはバディのままで終わるとうれしいのですが。

 

どうなるのでしょうね……?

 

今夜は「アニメどろろ」第十話、「多宝丸の巻」です。

 

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プログラムとフライヤー

 

ここまで読んでくださって、どうもありがとうございましたʕ ❛ᴥ❛ʔฅ💓

 

さて、明日はどんな「舞台どろろ」が見られるのでしょうか。

 

初日は、全体的に、これからさらに深化していくのではないかという印象をもちました。

 

拡樹さんも、まだまだ魅せてくれるのではないかと期待しています。

 

また百鬼丸に会えるのがとても楽しみですʕ^ᴥ^ʔฅ