宇宙シロクマ

Tuscan Blue's blog

髑髏城の七人 Season月 下弦の月 感想 1月31日(水)ソワレ

tuscanblue2015.hatenablog.com

 

髑髏城をでたら、赤い月が浮かんでいました。

スーパーブルーブラッドムーン。

皆既月食です。

 

血のように赤黒くて、欠けた月。

なんだか天魔王のよう……

そんなことを思いながら帰りました。

 

 

血の色は、天魔王の手の色でもあります。

 

はじめて、天魔王の赤黒く染まった手を見たときは、シェイクスピアマクベス夫人のように「洗っても洗っても手から血が落ちない……」という心象表現なのかと思いました。

 

でも最近は、あれは本能寺の変での火傷のあとなのかもしれない、と思うようにもなりました。

 

どうなのでしょう。 

 

あの白塗りの顔も、もしかすると、火傷のあとを隠すためなのでしょうか……?

 

 

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【ここからはネタバレを含みます】

 

 

 刃(やいば)よ明日(あす)に向かえ

 

「この刃よ明日に向かえ

 切り裂け 生きぬく あした……」

 

冠徹弥さんが歌う劇中曲です。

聞くたびに好きになっていって、もう、大好き。

今も聞こえてくるくらいです。

 

二幕で、髑髏城へ向かって走っていくときに流れるのがドラマティック。

 

カーテンコールで、この曲と共にみんながあらわれるのも最高にかっこいい。

これまでの物語が走馬灯のように浮かんできて、胸にせまります。

 

無界屋でのカーテンコールは1回目が特に好きなのですが、この曲の影響も大きい。

1回目だけ何度も見たいくらい、下弦の人々がすばらしく映えるのです。

 

音源がほしい!

もし劇場で売っていたら絶対買うと思います。

 

歌詞を聞きとりたいと思っているのですが、みんながあまりに素敵なので見とれているうちに曲が終わってしまうのでした。

 

カーテンコールにだけ流れる歌詞は、

「名残りの月もない 天のみぞ知る世界」

でしょうか……?

 

わたしは「天」と聞くと下弦天魔王を連想してしまうので、二重に深い意味に感じられます。

 

 

 

天蘭の心理戦

 

 

わたしは下弦を見るまで、なぜ蘭兵衛が無界の仲間を裏切って天魔王のもとにいくのか、あまりよくわかっていませんでした。

 

歌舞伎のような様式美として、「これはもう最初から決まっているもの」として受けとっていたのです。

 

でも、鈴木拡樹さんと廣瀬智紀さんの演技にはとても説得力があるので、はじめて理解できたように思います。

 

特に最近は、お二人とも鬼気迫る熱演なので、見れば見るほど納得してしまいます。

 

 

二幕一場、髑髏城、玉座の間

 

幕が開くと、天魔王はつまらなそうな顔をして扇をあおいでいるのですが、蘭兵衛があらわれると、喜色満面の笑みを浮かべます。

 

冷たい心に急に火が灯ったかのように浮き立って、扇の先までうれしそう。

 

手ぐすね引いて待っていたねずみが、ついにチーズの前にあらわれたのですから。

 

「ついにこの日がきたか……!」という思いでしょう。

 

天魔王はおそらく、どうやって蘭丸を陥落させるかの脳内シミュレーションを何百通りもしてきたのではないでしょうか。

 

あとは蘭丸が城に来さえすれば、ほぼ落とせるというところまで煮つめていて、自信もあった。

 

だから蘭丸が登城した時点で、天魔王の勝利は8割方、決まっていたのでしょう。

 

あとの2割は、天魔王の説得力次第です。

 

蘭兵衛は無界屋の主として成功していても、心に傷を抱えたままで、8年間ずっと満たされない思いでいました。

 

天魔王はその弱点をついて、蘭兵衛の心理をあやつろうとします。

 

蘭兵衛はあやつられまいと必死で抵抗するのですが、巧妙な天魔王によって傷をえぐられ、弱い心をむきだしにされ、粉々に叩きつぶされてしまいます。

 

天魔王は、自分自身と「信長」をたくみに演じわけます。

 

おもに彼自身の言葉で語っているのですが、ここぞというときには仮面をつけて信長の幻影をまとい、声色を変え、蘭兵衛を翻弄します。

 

この心理戦が見事なのです。

 

たとえば、エゲレスと「この話をつけるのに、8年、かかった」という天魔王の言葉は、重い。

 

「私は8年ものあいだ殿の遺志を忘れず、天のために邁進してきたというのに、おまえは一体どこで何をしていたのだ?」という問いかけです。

 

蘭兵衛はもとは武士であり、亡八稼業を心から誇ることはできない。

 

「この8年間、一体おれは何をしていたのだろう」

 

と、みずからをかえりみたはずです。

 

すべてを捨てて命を拾って、果たして本当によかったのだろうか、と……

 

そこへ天魔王は、強くて自信に満ちた顔で、「殿はおまえに生きろと言い、私に死ねと言った!」と高らかに攻撃します。

 

これは、「死ね」と言ってほしかった天魔王の哀しい嘘でもあるのですが、蘭兵衛には致命的な打撃となります。

 

武士にとっては、主に殉じたり、遺志を継ぐことこそが誉である時代だったからです。

 

(※2月5日は、ここで、鈴木天魔王がこれまで見たことのない凄い演技をしたので、胸をつかまれました。5日のレポに書きます)

 

 

蘭兵衛が立ち上がれないほどのダメージを受けてしまった、まさにそのとき、天魔王はやさしげな顔で救いの手をさしのべるのです。

 

「殿がもっとも愛したおまえと共に……!」

 

殿の想いを、夢をよみがえらせる。 

 

蘭兵衛にとって、まさに暗闇にさした一寸の光明だったことでしょう。

 

さしのべた手を、蘭兵衛がすがるようにしてとったとき、天魔王は震えるような歓喜の表情を浮かべました。

 

勝利を確信した瞬間です。

 

 

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鈴木天と廣瀬蘭の熱演が凄まじい、見ごたえのある口説きでした。

 

二幕一場は、蘭が天に説得されるだけでなく、観客が説得される場でもあるのだと思います。

 

 

 

扇シーン

 

 

31日は、見られました!

急いで閉まるスクリーンに、「もうちょっとゆっくりお願いします」と言いたくなりましたが……見られただけで満足ですʕ๑′ᴥ‵๑ʔ

 

あのシーンのよさは、一瞬にして消えてしまう儚さにもあるのですから。

 

 

二幕、無界屋襲撃前、髑髏城

 

天魔王は閉じた扇の先を左手にのせて、顔を客席にむけ、「おもしろい」と言いながら右手で扇をひらいていきました。

 

この、「言いながらひろげる」というのが本日の注目ポイントですね!(天扇マニア視点)

 

そしてパタパタとあおぎながら、ニヤリ、と邪悪な笑みを浮かべたのです。

 

なんだか愉しそうでした……ʕ๑′ᴥ‵๑ʔ

 

 

 

天魔王の無国籍感

 

 

髑髏城で、天魔王、蘭丸、生駒、剣布がずらりとならび、捨之介を捕えるシーンがあります。

この場の天も、脇でいながらすごくいい芝居をしてくれるので、いつも目が離せません。

 

捨之介と蘭丸が中心の場なので、天は後ろの薄暗がりにずっと立っているのですが、その闇もまた、彼の得体のしれない恐ろしさをかもしだしています。

 

捨蘭の会話を聞いて、わずかに眉をひそめたり、口角を上げたりしているのですが、それだけで感情があますところなく伝わってきます。

 

天のまわりの空気だけが、あやしげにゆらゆらと揺らめいて見えるのです。

 

 

生駒が捨之介に「そなたの刀では、天魔王さまには傷ひとつつかぬ」と言うと、天魔王は軽くひじをまげて両手のひらを上にむけ、にっこりと見せつけます。

 

ここはいつも変わらないジェスチャーです。

鈴木拡樹さんはびっくりするほど頻繁に演技を変えてしまうので、この変わらなさが、ものすごく貴重であるといえましょう。

 

(これまでわたしが「良き!」と思ってブログに書いた演技は、ことごとくなくなってしまいましたから……ʕ ˃̣̣̥ᴥ˂̣̣̥ ʔ )

 

(夢見酒など、もはや完全に別物……)

 

(「邪悪な投げキス」も、なんと1月4日だけでした……

 あの場にいた1300人は、ものすごいものが見られて本当にラッキーでしたよ……!

 ʕ ˃̣̣̥ᴥ˂̣̣̥ ʔ )

 

「軽くひじをまげて両手のひらを上にしてみせる天」も、おもしろくて好きなので、毎回、いつ変えてくるかな……と、ちょっとドキドキしながら見ています。

そして変わっていないのを見て、ほっとするのです。

 

このジェスチャーも良い例なのですが、下弦天のふるまいには、どこか無国籍感があります。

 

たとえば、口説きの場。

天魔王は、霧丸に向かって「首斬り」のジェスチャーをします。

(右手で自分の首を左から右へ斬ってみせる)

そして右手を少し上げ、指先を少しずつまげていって、軽く「バイバイ」のジェスチャーをするのです。

無国籍感がただようばかりです。

 

どちらもシーンにふさわしく、下弦天のキャラクター像が浮かびあがる演技だと思います。

 

 

 

吸血鬼と髑髏

 

 

よくツイートなどでも見かけるのですが、下弦天には、どことなく吸血鬼のような雰囲気があります。

 

鈴木拡樹さんが生みだした外見と演技がそう見せるのだと思いますが、映像の影響もあるのかもしれません。

二幕の冒頭で、スクリーンいっぱいに大きなコウモリが飛んでいくのです。

 

あやしげな音楽と共にコウモリたちが向かう先は髑髏城なのですが、まるでトランシルヴァニアあたりにあるゴシックホラーな吸血鬼城のようにも見えます。

 

あの冒頭で、天魔王=吸血鬼というイメージが無意識下にすりこまれるのではないかと思います。

 

天が呑んでいるお酒も、きっと血の色をしていることでしょう(赤葡萄酒)

 

 

 

生駒の死

 

 

天魔王は剣を横にまっすぐのばし、無言で生駒に「死ね」と命じます。

生駒はみずから、その剣で首を刺し、自害するのです……

 

剣を差しだすときの天魔王は、冷たい表情をしていることが多いです。

ところが31日は、唇の左端を少しだけあげていて、嗤っているようにも見えました。

 

いつもとは少し違う印象でしたが、表現を変えただけで、意味合いは変わらないのかもしれません。

(※2月5日は、ぞっとするほど冷酷な天でした)

 

 

 

六天斬り

 

 

捨之介が斬鎧剣で階段上にいる天魔王の仮面をはがすと、仮面は天魔王の足元に落ちてしまいました。

 

戦いの邪魔になる場所です。

 

すると天魔王は捨之介をにらみつけたまま、仮面を一切見ることなく、右足のサイドでまるでサッカーボールをふわりと浮かせるように蹴ったのです。

 

仮面はゆるやかなカーブを描いて、まるでゴールしたかのように下手のすみにおさまりました。

 

この天魔王、蹴鞠の心得がある……と思いました。

 

 

 

捨之介の反応

 

 

捨天決戦のクライマックスで、捨之介は天魔王の剣を飛ばします。

もはや天魔王にはなすすべがないのですが、それでも燃えるような瞳で捨之介を正面からにらみつけます。

その姿からは、強い矜持と気骨が伝わってきます。

 

捨之介は、「てんまおう!」と叫んで刀を大きくふりかぶるのですが、天魔王と目があった瞬間、ハッとして、気おされたように力をゆるめました。

 

捨之介の一瞬の目の色の変化に、ドラマがありました。

 

 

また、これまで捨之介は、天魔王が捨之介の剣を手にとってみずからを刺したとき、驚いて離れたままでいました。

 

でも、31日は、「馬鹿野郎!」と言いながら、剣を抜くためそばに寄っていったのです。

 

天魔王を「止めたい」と願う捨之介ならば、天魔王の自死も止めたいはずです。

宮野真守さんの演技は、捨之介としての自然な反応だったと思います。

 

 

 

天魔王の最期

 

 

最近の天魔王の飛び降り方は、両ひじを軽くまげて、手のひらを上にむけ、まっすぐ立ったまま後方に倒れていきます。

 

目は大きく見開いていて、天をあおぎ見ながら落ちていくのです。

 

頭からつま先まで全身を少しも曲げずに、まっすぐ倒れていくので、毎回、ぞくっとします。

そうとう筋力がないとできないことだからです。

 

わたしは一度、ダンスの舞台で、前向きに飛びこむ落下をしたことがあるのですが、落下地点が見えるぶん安心感がありました。

背面からの落下は、見えないのでとても恐ろしい……

勇気が必要だと思います。

 

天魔王の最期を見るたびに、いつも自分ですることを考えてしまうのですが、想像しただけで体が痛い。全身アザだらけです。

わたしは筋力がないので、まず着地で変なことになって骨折しそう💦

 

天魔王は、リハから数えれば100回近く落下するでしょうから、ものすごく体に負担があると思います。

鈴木拡樹さんは筋力があるから、だいじょうぶだとは思いますが。

お怪我のないようにお祈りしています……

ʕ -人- ʔ

 

 

 

走馬灯カーテンコール

 

 

回転するカーテンコールでは、まるで走馬灯のように、これまでの物語が浮かんでは消えていきます。

 

あのカーテンコールを考えた方は天才だと思います。

 

ここ最近の天魔王さまは、こんなご様子です。

 

やや上手を向いて立ち、右手にもった扇でパタパタとあおいで登場

→正面をむいて、扇で顔を隠す

→両腕を大きくひろげ、邪悪な笑顔で大きく嗤う

→やがて、すうっと無表情になる……

→淡い光がひたいや鼻梁を照らすだけで、目は闇に沈み、顔の陰影が強くなる……(←ここ、照明がいい仕事してます!)

→観客の視線が次の舞台にうつるころ、(天が下手のスクリーンに隠れる直前)、ニヤリと笑む

 

最後まで天を見ていた人だけが目にすることのできる、邪悪な微笑みです。

 

 

そうしてわたしは、いつも拍手をおくりながら、

「きょうも天が愉しそうでよかった……」

と、うれしいような切ないような気分になるのでした。

 

 

 

裏切りつづけて四十余年

 

 

31日は、伊達暁さんの渡京が過去最高にキレッキレで、何か言うたびに大きな笑いが起こっていました。

 

剣布さまとの対決後、渡京が霧丸に言うセリフ、「お前、俺がまたどっかで裏切ると思っていただろう。その予想を全力で裏切ってやったのだー!」でも拍手が巻き起こりました。

ここで拍手が起こる公演は、わたしは初めてだったのですが、この日の彼は本当におもしろくて納得の拍手でした。

 

 

 

おきりのセリフ(樹麗さん)

 

 

荒武者隊が料理をするために去ったあと、おきりが出てきて言うセリフは、いつも「隠し味はお味噌よー!それが味噌♪」だったのですが、「お勝手はきれいに使ってねー!きれいによー!」に変わっていました。

 

おきりが下働きで、いつも台所仕事をしているのだということが伝わる、いいセリフだと思いました。

やっぱりキッチンはきれいに使ってほしいですものね。

ぐちゃぐちゃにされてしまったら、片づけるおきりが困ってしまいますから💦

 

 

 

象徴としての、いん平(インディ高橋さん)

 

 

いん平が、息子の兵庫がなぜ村を飛びだしたのかを説明するくだりが、いつにも増して熱かったです。

 

物語の冒頭では、いん平は「しいたげられる農民」のひとりだったのですが、やがて心を決めて、髑髏城へと走りだします。

髑髏党の幹部を相手に、自分のアイデンティティであるクワをもって戦い、勝利をおさめるのです。

そして、亡くなった荒武者隊の着物をつなぎあわせて仕立てた着物をまとい、「あらむしゃ田い」を名乗り、新しい世界へ颯爽と旅立っていく……

 

いん平さんは声なき多数派の象徴であり、月髑髏の影の主人公のひとりでもあると思います。

 

 

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ここまで読んでくださって、どうもありがとうございましたʕ๑′ᴥ‵๑ʔ

 

1月31日は、64公演中、49公演目でした。

 

ラストスパートをかけるSeason月にせかされるように登城して、現時点で、2月5日と7日ソワレを観劇しています。

 

どちらもすばらしい公演でした。

残すところ10公演あまりというクライマックスなのに、さらなる進化と発見があったので感動……

 

見れば見るほど、好きになってしまいます。

 

 

それでは、またあしたʕ ❛ᴥ❛ʔฅ~~💓