宇宙シロクマ

Tuscan Blue's blog

髑髏城の七人 Season月 下弦の月 感想 【前期最終公演】12月27日(水)ソワレ

劇団☆新感線 

作:中島かずき 演出:いのうえひでのり

捨之介     宮野真守

天魔王     鈴木拡樹 

無界屋蘭兵衛  廣瀬智紀

兵庫      木村了 

霧丸      松岡広大 

極楽太夫    羽野晶紀 

狸穴二郎衛門  千葉哲也

http://www.tbs.co.jp/stagearound/tsukidokuro/cast/kagen.html 

 

 

 

【ネタバレを含みます】

 

11月27日(月)18:00(1回公演)

 

12月13日(水)マチネ

 

12月27日(水)ソワレ【前期最終公演】

 

 

捨之介(宮野真守さん)

 

宮野捨之介、すばらしかったです。

捨之介としてのひとつの完成形を見せていただきました。

 

クライマックスの捨天対決は、圧巻のひとこと。

六天斬りから天魔王の最期、捨之介の慟哭にいたるまでのシークエンスは、前期最高だったのではないでしょうか。

 

捨之介も天魔王も、震えがくるほどの熱演だったので、重苦しい衝撃がしばらく抜けず舞台に集中できなかったほどです。

 

 

宮野真守さんの捨之介は、冒頭の名乗りで「三途の川に捨之介だ!」と一気に大きく叫ぶことはありません。

いつも「三途の川に……」のあとで少し間をおいたのちに、「……捨之介だ」と、つけくわえるように言います。

 

まるでそう名乗ることに迷いがあるようでもあり、自分に何かを言い聞かせているようにも見え、なにやら物語性のある「間」と「声色」だなと思っていました。

本当は捨て切れていない、捨てることなどできない過去があるのではないかと……。

 

その物語の一端を、捨天対決で見たように思います。

 

天魔王の死は自死ではありますが、捨之介にとっては自分で殺したようなものでしょう。

みずからの剣が、天魔王の肉をつらぬいていく感覚を、捨之介は一生忘れないはずです。

救いたかった「仲間」を自分の手で殺してしまったのですから。

 

あれは「陽」の人である捨之介が、「影」に捕らわれた瞬間だと思います。

 

これでは捨之介は、一生、天魔王の死を忘れられなくなってしまいます。

(ふと、「相手に自分のことを忘れさせないために目の前で飛び降り自殺をする」というシーンのある作品をいくつか思い出しました。校舎の屋上から、窓から、橋の上から……)

 

捨之介は天魔王に呪いをかけられてしまった。

術者が死んだことで永遠に消えることのない呪いを。

 

そんな捨之介を絶望から救いだしたのが霧丸であり、極楽太夫など仲間たちの存在なわけですが、捨之介に刻まれた呪いが完全に消え去ることはないのではないかと思いました。

 

過去に、人知れずいくつも背負ってきたであろう哀しみにくわえて、さらに天魔王の呪いまで刻印されてしまった。

 

捨之介は、これからも名乗りをするたびに、「三途の川に……」のあとに少し迷いを見せてから、それでも太陽にむかって生きていくためにふりはらおうとして顔を上げ、「……捨之介だ」と言うのではないかと思います。

 

捨てきれない過去を背負いつつも、覚悟を決めて、みずからを奮い立たせながら。

 

 

 

天魔王(鈴木拡樹さん)

 

……こわい。

これまで見た中で一番こわかった。

思い出すだけで恐怖にふるえる。

怖さがパワーアップしすぎて突き抜けていました。

 

好きか嫌いかでいえば嫌いなタイプで(こわいの苦手なので……)、だからこそ、今回の芝居がいちばん凄かったと思います。

 

前回までは、ここまでの恐怖は感じませんでしたから。

(むしろ、そんなに怖くも嫌でもなかった。)

 

「怖さ」「嫌さ」をここまで極めてしまったか、という感嘆。

 

ところが、あんなに極悪非道で嫌な人物なのに、なぜかずっと見ていたくなるような魅力があり、かわいそうとさえ思ってしまう。

 

そういう感想をよく見かけますし、私も同感です。

 

天魔王というキャラクターは基本的に酷い人間なのですが、鈴木天魔がただの嫌な悪役で終わっていないのは、役者の個性だと思います。

 

私はどんなに能力の高い役者であっても本人の気配を演技で完全に消せるとは思っておらず、かならずにじみでるものだと思っています。

 

また、にじみでてしまうがゆえに、役の魅力が生まれるのだと。

 

たとえ同じ画材を使って同じ絵を描いたとしても、描き手が違えば味わいの異なる絵になるように。

 

だから下弦天魔王を初めて見たときも、ああ、鈴木拡樹さんという方は、こういう個性(天魔王という役の性格とは関係のない、役者の内的要素)のある方なのだなと思ったわけです。

 

声のトーンや演技法は、今まで見た中ではいちばん好みでした。

 

前期の集大成、これが下弦の天魔王!という決定打を見せてもらった思いです。

 

 

印象に残ったシーンのひとつは、

二幕、無界屋襲撃の前、髑髏城。

 

蘭丸の言葉を受けた天魔王が、愉しそうに扇でパタパタとあおぎながら、にやりと意味ありげに笑った顔を客席にぬらっと傾け、スクリーンが急ぎ閉じていくさまが、ぞっとするほど完璧でした。

 

恐ろしさと美しさのある演出で、運命の刻が近づいているという疾走感と焦燥感がつのります。

 

 

ところで、毎回これだけ天魔王について語っておきながら、殺陣については一回も書いたことがありませんでした。

 

実は、無界屋襲撃のことを考えると、ものすごく悲しい気持ちになってしまうので、あまり天魔王の殺陣については考えたくなかったのです。

 

(だから無界屋ガールズについてもあまり考えたくないのでした……かわいそうすぎて😢絶句)

(蘭兵衛の殺陣も一幕限定で……)

 

無界屋襲撃の場は、いつも心を離して見ています。

 

(そうしないと、「なんて酷い話……」で終わってしまってすべてがいやになるので💦)

 

端的に言えば、鈴木天魔はもともと上手でした。

 

ひとふりひとふりが重く、一撃必殺、骨まで断つような剣技。

 

今はスピードが増して恐ろしいことになっています。

 

天魔王の「怖さ」がパワーアップした理由のひとつは殺陣にもあるのではないかと思ったので、今回、書くに至りました。

 

あ、口説きの場での天蘭対決なら語れますね。

 

別記事にも書きましたが、『髑髏城の七人』のナビ番組であの稽古シーンが流れたので、本番との比較もできておもしろい。

 

特に、天魔王が「そんな剣で……」「そんな覚悟で……」と言いながら蘭兵衛を後退させていくところが好きなのですが、これまでで一番、剣が重くて迫力がありました。

 

「夢見酒」「捨之介との関係」「天魔王の最期」については後述します。

 

 

 

蘭兵衛(廣瀬智紀さん)

 

一幕は、廣瀬蘭兵衛の進化に驚きました。

まさに蘭兵衛を生きている、ということが伝わってきて、板についていました。

殺陣も、1か月前とは別人ですし、2週間前よりもさらによくなっていました。

廣瀬智紀さんって十代?と思ったほどの急激な成長。

太刀筋がいいだけでなく、曲の音数にきっちりあっているので、見ていて気持ちがいい。

まるで舞いのようなのです。

スピード感もあるので、残像がきれい。

1か月前は、順番通りに動いているのがひしひしと伝わってきたというのに、今は舞いながら斬っている……。

なんという進化スピード。すばらしい。

シングルジャンプしながら斬ったときは「ええー!?」という感じでした。

なんというか、ほんとに斬ってましたね、あれは。

 

また、声もよくなっていました。

前は風が吹き抜けるような声で苦手だったのですが、落ち着いた良い声になっていたと思います。

おかげでセリフがいっそう生きていました。

彼はもしかすると1公演ごとに1年くらい成長しているのかもしれません。

 

私のTwitterフォロワーのmihoさんが素敵なことを書いていたので引用します。

 

「彼は本当に蘭が好きなんだなあ、と伝わるものがありました。

 誠心誠意、蘭になろうと努力してるのでしょうね」

 

 

 

極楽太夫(羽野晶紀さん)

 

羽野太夫は、いつ見ても芝居が際立って上手で、美しく、何度も見たくなるような極楽太夫なのですが、今回がいちばん好きでした。

 

おそらく「声」という要素が大きいと思います。

これは完全に趣味の問題だと思うのですが、前回までは、ちょっとくせのある作られた発声だったのです。

でも今回は、素直で自然な発声に変わっていて、セリフ回しにリアリティがあり、それがとても私の好みでした。

 

歌声にも艶があり、音程も完璧で、心に響きました。

おかげで公演以来ずっと、脳裏には白い曼殊沙華の野が浮かび、羽野太夫の歌声が鳴り響いています。

 

クライマックスで七人のシルエットがならぶときも、羽野太夫はまるで騎士のように輝いていて素敵だったので、心惹かれて、ずっと見ていました。

 

 

 

夢見酒

 

私はこれまで、過去の髑髏に関しては、「夢見酒は口移しにするよりも手で渡す演出のほうがいい」と思っていたのですが、下弦天魔のキャラクターだと、「どちらでもいいかもしれない」と初めて思いました。

 

下弦天と下弦蘭の夢見酒は、口づけのように親密な雰囲気はなく、まるでなにか重要な秘密を刻印しているかのように見えます。

 

ここにも下弦の天魔王らしさ、そして蘭丸への心理がよくあらわれていると思います。

 

愛情も思いやりも一切なく、乾いている。

 

ああ、この天魔王は、本心では蘭丸のことが嫌いなんだな、ということが伝わってきます。

 

そして蘭丸はそのことに気づいていない。

 

だから私には、あの場についてよく言われているような「耽美」とか「妖艶」とかいうようなことは、あまり思えませんでした。

 

まるで冷たい契約の儀式のように見えました。

 

そしてその空気感が、とても良いと思ったのです。

 

 

今回の夢見酒で浮かんだのは、「ユダの接吻」でした。

 

イスカリオテのユダは、イエス・キリストに接吻して合図し、彼を捕えさせます。

つまり、接吻には裏切りという意味もあるのです。

 

天魔王はあの瞬間から、すでに蘭丸を裏切っていたという伏線なのかな、と、ふと思いました。

 

そう考えてみると、終盤で突然、蘭丸を斬りつける天魔王の行動にも、ひとつの道筋が見えてくるような気もします。

 

 

 

天にむかって

 

天魔王は蘭丸にとどめを刺す直前、陶酔したように天にむかって高々と口づけを投げました。

 

その姿を見て、彼が愛してやまないのは自分の理想としての「天」だけであり、信長という人間ですらなかったのだと……そんなふうに思いました。

 

それともあれは口づけではなく、天に唾する行為だったのでしょうか……?

 

すぐに天魔王自身にかえってきて破滅したことを思うと、そうだったようにも思えてきます。

 

次回、1月4日に確かめてきたいです。

 

 

捨之介と天魔王

 

天魔王は基本的に、誰かが話しているときは、とてもつまらなそうな、嫌そうな顔をしています。

 

なまじ人よりも頭がいいので、相手のことがくだらなく思えてしょうがないのでしょう。

 

誰もかもが退屈でしょうがない。

 

特に、相手が捨之介だと本当に嫌そうな顔をします。

 

もし小さいころから一緒に育ったのだとしたら、そのころから実は嫌いだったのではないでしょうか。

 

時には、あの明るい太陽に惹かれたり、救われたりすることもあったでしょうけれど、成長するにつれて少しずつ苦手になっていき、今や大嫌い。

 

たとえば捨之介や蘭兵衛が「仲間」と口にするたびに、天魔王はいちいち反応して嫌な顔をします。

 

「仲間」という言葉もふたりのことも嫌いなのでしょうね。

 

(子供のころも、リーダーシップをとって仲間をまとめる捨之介に対して、「勝手に仲間あつかいするな」と思っていたのかも……?)

 

クライマックスの捨天対決でも、もしふたりが現代の十代だったら、天魔王は「……だから俺は昔からおまえのことが大嫌いだったんだよっ!」と言いだしたかもしれません。

 

それほど捨之介の太陽攻撃は、天魔王にはキツかったのではないかと思います。

 

捨之介の言うことは捨之介にとっては正論なのですが、今、ここでその男にそれを言って、一体どうなる……というような追いつめ方になってしまうからです。

  

 

 

天魔王の最期

 

下弦の天魔王は理性的で用意周到に見えるので、実は死を偽装しただけで生きのびているのかも……?と思ったこともありました。

 

おなじような感想をよく見かけるので、同意する方も多いのではないかと思います。

 

実は、月髑髏には映画のエピローグのような続きがあり、変装した天魔王がどこかの港町にいて、外国へいく船にのりこもうとしている……

 

そんな光景を容易に思い浮かべることができます。

 

もしくは、すでにマカオあたりの花咲く路地を歩いているかもしれない。

 

そんな想像を打ち壊すかのように、下弦天魔王は飛び降りる寸前、のどを切ったように見えました。

 

本気です。本気で死ぬつもり。

 

万が一にでも、生き残ってしまうことがないように、みずから介錯したのでしょうか(幻覚?)

 

強い眼光で捨之介をにらみつけて背面から飛び降りたあとは、ただただ、重苦しい衝撃があたりを支配していました。

 

 

 

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1/3【追記】

一瞬、のどを切ったように見えたのは幻覚のような気がしてきました。 

 

 

ここまで読んでくださって、どうもありがとうございます。

言葉ではあらわせないくらい、すばらしい舞台でした。

 

11月27日が100とすれば、12月27日は200。

千穐楽には400になっているのではないかと思います。

 

 

ああ、楽いきたい……

下弦を最後まで見届けたいので、またチケット販売してほしいです……

ʕ ˃̣̣̥ᴥ˂̣̣̥ ʔ

 

それでは、またあしたʕ ❛ᴥ❛ʔฅ~~💓

 

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